3-4.Podcastとリスク管理
配信するプラットフォームを増やし、露出を増やし、リスナーを増やす努力ばかりを論じてきましたが、リスク管理に対する不安を抱くこともあるかと思います。これまで説明してきたようにPodcastはRSSを利用した配信サービスであり、RSS自体は音声ファイルを内包していません。RSSには音声ファイルの保管場所を示すURLが記載されていて、リスティングサービスや聴取用のアプリは「その都度、保管場所にアクセスしてファイルを再生またはダウンロード」しています。この仕組みのおかげで以下のような事が実現できています。
- RSSを活用した音声配信=ポッドキャストで実現出来る事
- 配信済みの番組の音声ファイルを差し替える(同名のファイルを再アップ)
- 保管場所や配信するファイルを変更する(RSS内のURLを変更する)
- エピソードを取り下げる(RSS内のエピソード情報を削除する)
- 音声ファイルをアクセスできないようにする(サーバーから削除する)
全ての聴取者やプラットフォームが正しいルールの下にPodcastを利用している前提であれば、いつでも容易に配信内容を差し替え、取り下げる事が可能となります。効率的に配信を行う為に、音声ファイルがキャッシュされ即座に反映されない場合もあるのでその点は注意が必要です。
余談になりますがPodcastは「GUID」というIDによりエピソードの一意性を判定しています。ファイルを差し替えても、概要欄を修正してもGUIDが同一であれば同一エピソードして取り扱われます。もし不用意にRSSフィードを修正しGUIDが変更されるとそれは新しいエピソードして一斉に聴取者の元へ配布されることになるので注意が必要です。
電器屋WalkerでもGUIDを変更してしまった過去があります。サーバー移転かファイルの保管場所かを変更した時だったと記憶していますが、100件くらいのエピソードが全て「新しいエピソード」として登録して頂いているリスナーさんの元へと配信され、混乱を招きました。
ここでもう一つのPodcastの特徴である「オフライン再生」に注目してみましょう。ネットワーク環境が悪い場所でも途切れなくPodcastを聴取する為には事前に音声ファイルを端末にダウンロードしておく必要があります。端末にダウンロードされたファイルは当然のことながら配信側の都合で消去する事はできません。つまり、音声ファイルを差し替えたとしても、端末上のファイルは変更できないことになります。
何らかの方法で配信音源をアプリ外に持ち出すことは技術的には可能で、しかもハードルは高くないと思います。例えばスマホで再生した音源を別なスマホのレコーディングアプリで録るなど、やる気になれば誰でも配信音源を保存しておくことはできてしまいます。それを理解した上で、「音声ファイルの差し替えや取り下げは一般論として可能で、概ね効果がある、しかし完全ではない。」という事を理解しておきましょう。
「配信しては困る内容は配信しない」という事を原則として収録や編集をするのが安心かと思います。
なんだか脅かしているように聞こえるかも知れませんが、リスクはリスク。通常は問題になる事はないので過剰な心配はせず、頭の片隅には入れておいて下さい。
クレーマーが発生しやすいネットワーク社会の現代において、少数のネガティブコメントに1件1件対応する必要性は基本的に高くありません。そうではあるものの、時に番組やブランドイメージに対しての影響が無視できない場合も発生するかも知れません。Apple Podcastはレビュー評価(コメント)が投稿できます。投稿されたコメントは配信者側の都合では削除する事はできないため、ネガティブコメントに対するリスクを回避したい場合はApple Podcastへの登録を見送る事も検討できます。
残念ながら2021年9月現在、配信者がレビュー機能自体を無効化する事はできません。Apple Podcastへの登録を見合わせることは配信者の判断に委ねられますが、Apple Podcastは現時点一番利用者の多いプラットフォームである事も無視できませんから、どちらを取るかは慎重に考えましょう。